Go to contents

[社説] 美しい始球式

Posted April. 05, 2001 19:53,   

한국어

今年のプロ野球開幕戦で始球式を行なったアダム・キング(9)少年は、我々に夢を与えた小さなヒーローだ。キング少年が韓国プロ野球の20周年を記念する始球式に先立ち、「こんにちは。僕のヒーローはアメリカの伝説的なホームラン王ベーブ・ルースです」とたどたどしい韓国語で挨拶をしたところ、球場を埋め尽くした3万の観衆が一斉に激励の声援と拍手を送った。アダム・キング少年の始球式は韓国プロ野球20年の歴史の中でも最も美しく、最も感動的な場面となった。

指がくっ付き、両足が腐っていくという奇病に冒され、韓国の生みの親にすら見放された少年は、米国に養子に送られ、三度に渡る外科手術によって太ももから下を切断し、チタニウムの義足を得た。マウンドからボールを投げ、赤と青のチタンの足を引きずりながら歩く姿は、SF映画に出てくる火星人のようだったが、その表情は誰よりも明るく元気だった。ベーブ・ルースだけがヒーローではなく、キング少年こそがまさにこの日のヒーローだった。

祖国と生みの親に捨てられた障害児を引き取り、愛情を注ぎ、ユーモア感覚あふれる野球好きの少年に育てたアメリカ人ボブ・キング氏の無限の人間愛に、我々は恥ずかしさすら覚える。ボブ・キング氏は実の子供3人の他に養子が8人いる。障害児を一人育てるのも大変なのに養子のうち5人は障害児だ。韓国から4人の養子を引き取ったボブ・キング氏は、7月に再び韓国から脳性麻痺の障害児を引き取る予定だ。

韓国人は血筋で成り立つ家族の輪の外の者には、心を閉ざす閉鎖性と偏狭さが目立つ。未婚の母などに捨てられ、孤児院に引き取られた子供たちの99.5%が海外に養子として渡っている。数少ない国内での養子のうち、障害児はほとんど見られない。

先進国では孤児院に預けるのは児童虐待であるという認識が根付いており、孤児を受け入れる施設が消えつつある。韓国は6.25戦乱(朝鮮戦争)の時に付けられた「孤児輸出国」の汚名を、世界で第11位という経済成長を成し遂げた現在も未だに返上できていない。近所に障害者施設が建つと聞くと集団で反対する。「人権と福祉」を語る資格などあるのだろうか。

愛と希望に溢れる社会をつくるためには、ただ血統だけにこだわる価値観にとどまらず、疏外されている身近な人たちに関心を傾ける必要がある。ボブ・キング夫妻の大きな愛情とキング少年の明るい笑顔から生きる価値が何なのかをあらためて考えさせられる。