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[オピニオン]韓国に来た脱北者たち

Posted April. 29, 2003 22:09,   

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「韓国に来てから、いろいろ現実的な問題にぶつかった。ハナ院(政府が運営する北朝鮮脱出者の定着支援施設)で、大韓民国の社会、経済、文化などについて教育を受け、この社会に対して自分が持っていた夢は荒唐無稽の蜃気楼であったと悟るようになる。何から手をつけどのようにすべきなのか五里霧中の状態だった。政府が準備した賃貸アパートで私を待っていたのはほこりの山だけだった。しばらく呆然と立っていた。がらんとした家を見渡すと、寂しさが押し寄せてきた。世の中に自分が一人であるという孤独感…。そのような一日を送った」

◆2001年3月に韓国へ来たという北朝鮮脱出者の金氏がインターネットに書き込んだ手記の一部だ。自分だけ見捨てられたような寂しさ…。しかし金氏は希望を失わなかった。生活必需品の価格に慣れ、路上でお年寄りに道を教えてあげるような些細なことで自信を持ち、一つひとつ世の中のことを学んでいった。金氏は30代という年齢で大学に入り、新聞放送学を学んでいる。彼の手記は、次の学期には英語を一生懸命勉強し進路を考えると約束して、最後を締めくくった。

◆北朝鮮からの脱出者がみな金氏のように現実を克服して生きていくことはできない。韓国社会に適応できずにさ迷う人も少なくないということだ。なかには山に登って北朝鮮の故郷の土を眺め自殺を図ったり、アルコール中毒や犯罪から脱け出すことができない例もある。脱出者問題に詳しいユン・ヨサン博士(韓国政治発展研究員責任研究委員)は、北朝鮮からの脱出者がよく見せる特徴として、行動主義的な性向、極端な性向、非正常的な期待水準、情緒の不安定性、極度の安全欲求などが挙げられる。このような脱出者たちには、たった2カ月間の適応教育の後、社会に「放出」する政府の支援体制に満足できるはずがない。脱出者を助ける民間団体や宗教団体があるというが、これらの役割にも限界がある。

◆統一部の集計によると、02年末現在、国内居住の脱出者は総2886人。昨年だけでも約1100人が新たに入国し、「年度別1000人」時代を開いた。しかし「個人単位の小さな統一」である脱出者の国内適応に対する社会の関心は、依然として微々たるものである。そのような中、米紙ニューヨーク・タイムズは最近、韓国に来た北朝鮮からの脱出青年たちの困難な定着過程を集中して報じた。国連人権委で北朝鮮人権問題の決議案が採択されたように、脱出者問題については、むしろ外国で大きな関心を持たれているようで、面目がない。韓国生活について質問する外国人記者に「他の惑星に来た宇宙人のようだ」と答える北朝鮮からの脱出青年を、元気な市民にするのは社会の責任ではないだろうか。

宋文弘(ソン・ムンホン)論説委員songmh@donga.com