Go to contents

[オピニオン]エイズ

Posted March. 16, 2009 09:48,   

한국어

映画俳優、トム・ハンクスがエイズにかかって死に掛ける同性愛者の役を演じた映画「フィラデルフィア」は、世界の観客らの頭にエイズという病気を焼き付けた。主人公は死ぬ数日前、アリア「お母さんに亡くなられ」を聴きながら示した狂気に満ちた演技は圧巻だった。エイズ患者への偏見や差別を告発したこの映画は1994年、アカデミー賞を総なめした。監督のジョナサン・デップは作品に事実性を与えるため、53人のエイズ患者を脇役やスタッフとして参加させた。

◆当時のエイズに対する認識は、「同性愛者がかかる不治の病」という程度だった。わが国はエイズにおいては無縁同然だった。でも20年あまりで、状況は様変わりした。まず、エイズは不治の病ではない。HIV(人免疫不全ウイルス)の感染を防ぐワクチンは開発されていないが、強い抗ウイルス剤が血液内のウイルスの強さを和らげ、免疫体系を保存して、患者がうまく持ちこたえながら生きていけるように手助けする。1991年、エイズにかかってバスケット・ボールから離れたマジック・ジョンソンは、18年が過ぎた今も、元気に活動している。スイス系の多国籍製薬会社、ロシュが開発した治療剤「プジェオン」は、保険価格において合意に達することができず、国内では販売されていない。

◆わが国でも感染者が急増している。保健福祉家族部によると、昨年末基準でのエイズウイルス感染者は6120人で、初めて6000人を超えた。このうち1000人ほどが死亡し、生存者らは保健当局の管理を受けている。エイズが蔓延しているインドやタイなどに比べて、全体的な数字は少ないほうだが、急激な伸び率を示している。外国人講師をはじめ、外国人労働者の流入や若者層の開放的な性文化による影響だという指摘もある。

◆エイズ患者である20代のタクシー運転手が、数多い女性と性的関係を持ったことが明らかになり、ある地方都市ではなかなか眠れない人々が増えている。医療サイトにはエイズの症状を聞く問い合わせが殺到しており、エイズ検査の申請は10倍以上増えた。通常のエイズ患者はほかの人との接触を自ら避ける。免疫力がなく、小さな病気にでもかかったら、命取りになるからだ。しかし、患者が復讐でもするかのようにウイルスを撒き散らせば、太刀打ちできるすべがない。1987年制定されたエイズ予防法は、エイズの拡散を食い止める有効な手立てではないという批判が持ち上がっている。エイズの管理システムが不安でならない。

鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com