「とりあえず走れ」は、「とりあえず若い」映画だ。
ソン・スンホン(26)、クォン・サンウ(26)、キム・ヨンジュン(22)らテレビやCMでおなじみの面々が主人公だ。
しかも、監督はというと、今回の作品で初めて長編演出を担当したチョ・ウィソク監督の年は、数年前の映画界隈の雰囲気ならば「子ども」扱いされていたはずの26歳。
彼ら「若い血」にとってお得意の早いストーリー展開と音楽は、「とりあえず走れ」を感覚的な若い感性の映画に仕上げた。
この作品は、突然「成り金」になったソンファン(ソン・スンホン)、ウソプ(クォン・サンウ)、シンウォン(キム・ヨンジュン)ら3人の「悪(わる)」の高校生に起こるエピソードを集めたコミックアクション。
3月に封切りした「ジャングルジュース」が金に目がない青春の姿を表現したのに対し、「とりあえず走れ」はスムーズで気楽な印象だ。
「トレイン・スポッティング」を連想させる疾走のシーンや金、笑い、アクションなどで続く「とりあえず走れ」の主要コードは、目新しいものではない。しかし、演出者の映像と音楽に対するセンスある調律は、この作品を退屈させない見ごたえのある娯楽映画に仕上げた。
10代で留学したせいで遅れて高校に編入したソンファンとホストのアルバイトでお小遣いを稼ぐウソプ、インターネット放送を運営するチンウォンは、成長環境と個性は違うが仲良しだ。
そうしたある日、彼らが乗った車に血だらけの泥棒(イ・ムンシク)と彼が盗んだ21億ウォン分のドル貨幣が入ったカバンが落ちてきて事件が始まる。3人組は「とりあえず俺たちのものにしよう」と走ることにするが、すでに死んだと思っていた泥棒が姿を消したことで事が複雑になる。新参刑事チヒョン(イ・ボムス)は、泥棒に入られた消費者金融業者の家を訪ねたが、被害がないと否認される。チヒョンはそこに興味を感じて捜査を始める。
「とりあえず走れ」は、主演と助演の区分はあるが、事実上登場人物すべてが主演とも言える映画だ。3人の高校生とチヒョンを中心に「再起」を狙う泥棒、消費者金融業者に雇用されたキラーたちが金をめぐって追いかけっこをするが、目的はひとつだ。それは、観客を笑わせること。そして俳優たちのチームワークはすばらしい。
グループ「クイーン」の「Don’t Stop Me Now」などが使用された音楽と画面、随所に字幕を使用したテクニックが印象的。
この作品は、とりあえず観客を笑わせる魅力はあるが、残念な点もある。一歩さらに進んで、その笑いの間に登場人物の生き方や影が感じられる「後味」がないという点だ。
10日封切り。15歳以上観覧可。
金甲植 gskim@donga.com