Go to contents

[オピニオン]ナポレオン

Posted October. 29, 2002 23:32,   

한국어

最近、「ナポレオン」を著述した米国の歴史学者ポール・ジョンソンは、イエスを除いた歴史人物のうちもっとも多くの著書を生んだ人物がナポレオン・ボナパルトだと述べた。にもかかわらず、またしも本を書いたのは、ナポレオンこそ20世紀の破壊的な戦争と全体主義的な政権の種をまいた本人であることを明かすためだという。この本は、「不可能という言葉は我が辞書にはない」と言ったナポレオンが、実は力以外は何事も信じなかった日和見主義者で、二番目の妻マリー・ルイズとの初日さえも最高の性的遂行能力を見せることしか頭になかったと指摘した。

◆だが、フランス人にとってナポレオンほど尊敬できる英雄はいない。今月初めにフランスでは4000万ドルというテレビ史上初の最高額で、ナポレオンに関するテレビ連続ドラマを放映し、数多くの「ナポマニア(ナポレオン狂)」を作り出した。今日のフランスの現実と違って、ヨーロッパはもちろん中東、北アフリカにまでフランスの名をとどろかせた偉大な人物だからあれほど熱狂するのだ、とニューヨーク・タイムズは分析していた。こんなナポレオンに対して、英国の歴史学者フランク・マクリンは、カリスマにあふれるリーダーであり、こうかつな戦略家、そして他人の髪の毛を抜く拷問を楽しんだサディストだと書いた。

◆ナポレオンの毛髪を分析した結果、彼が英国人に毒殺されたのではないことが明らかになった。これまでフランスの少なくない歴史学者は、英国領セント・ヘレナ島で死亡したナポレオンの死因がひ素中毒、それも英国人による毒殺だという疑惑を持っていた。ところが、フランス最高の科学者が精密分析した末に自然死だと結論出したという。毛髪に含まれたひ素は当時よく使われたはげ頭の発毛剤のようだというのだから、天下の英雄も脱毛には非常に頭を悩ましたようだ。

◆強国に対するフランス人の郷愁を理解できないわけではないが、わたしにとって強力な指導者は他人にとっては極悪な征服者になりうる。テレビドラマの放映直後、イタリアでは侵略者を英雄視しているという批判が出たほどだ。だが、イタリア内部では強いイタリアを作ったファシズムを再評価すべきだという動きがある。韓国にも強い指導者に対する郷愁があると信じている向きがある。大統領候補の張世東(チャン・セドン)氏は、「一部の保守派の第5共和国(朴正煕政権)に対する郷愁勢力」から支持を集めている。また、朴槿惠(パク・グンヘ)氏もやはり、父親の「強いリーダーシップ」の後光のおかげで、株を上げている最中だ。いくら強くても、「長期間にわたっていっしょにした経験と努力の結果、築き上げられた政府でなければ、決して根を下ろすことはできない」といったナポレオンが自ら皇帝の座に就いては没落した歴史の逆説を彼らは知っているだろうか。

金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com