海外旅行に行くと、我が家ほど恋しくなるものがある。キムチとカップラーメンだ。カップラーメンにキムチさえあれば、どんな豪華な食卓もかなわない。私も一時はハンバーガーだけで１００日は軽く食べつなぐことができた。でも今は、キムチのない食事は考えられない。ラーメンも食べ続けるのは良くないと知りつつも、どうしてもやめられない。キムチとラーメンには特有の中毒性がある。ともかく、キムチとラーメンこそ、心理的・経済的・肉体的危機において旅行者を励ます清涼剤であり、ビタミンだ。
◆先日、ギリシャに行った時の事だ。現地ガイドの車に乗ってアテネを見物していたが、車の中が急に何ともいえない匂いになった。あまりの暑さに、小さなパックに包装したキムチが破裂しはじめたのだ。韓国から同行した友人の旅行カバンには、パック入りキムチが１０個も入っていた。現地ガイドは顔がこわばり、口をつぐんでしまった。私たちはどうするべきか話し合ったが、キムチを捨てるということは罪悪のように感じられた。まだ１袋も食べていなかったのだ。
◆その日の夜、クレタ行きのフェリーに乗った。客室に入った瞬間、キムチの匂いが部屋いっぱいに漂い始めた。現地ガイドはカバンを放り投げるようにして外に出て行ってしまった。キムチの入った袋を詰め直し、部屋を換気し、香水を振りまくなど、できるかぎりのことをした。事態が収まると、友人がカップラーメンを取り出した。「一個ずつ食べようか？」。レストランでお湯をもらってデッキに上った。友人はデッキのどこかに隠しておいたパック入りキムチ３袋を取り出してきた。それこそ最高の晩餐だった。その後、旅行中に出会った韓国人たちに私たちの秘密を教えてあげた。「クレタを行き来するフェリー、クノソス・パレスに乗ったら、デッキに隠してあるキムチ貯蔵庫を探してみてください。パック入りキムチ７個があるはずですよ。」
◆海外旅行を長い間している人は、キムチの大切さを知っている。数日前、韓国選手たちがオリンピックに参加するためにアテネに出発した。彼らの食事を担当する専門栄養士も一緒だ。たとえ、カロリーは低くても、なくてはならないおかずがキムチだ。ギリシャの熱い太陽のもと、国のメンツをかけて最善を尽くしている韓国選手たちに、キムチの効果があること期待したい。韓国選手の皆さん、キムチを食べてファイト！
金ミジン 客員論説委員（小説家） usedream@yahoo.com
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