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「指導者が論争の中心に立てば尊敬失う」 大統領学の権威に聞く

「指導者が論争の中心に立てば尊敬失う」 大統領学の権威に聞く

Posted January. 15, 2007 03:09,   

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「おい、ブレア、最近はどうだ?」「まあまあね」「ところで、あのコフィー(コフィー・アナン国連事務総長)の態度は何だ。国連のやるべきことは、ヒズボラに『あんな畜生なこと』をやめさせることだけなんだけどな」

昨年7月17日、ロシア・サンクトペテルブルグで開かれたG8首脳会談の昼食会場。ブッシュ米大統領とブレア英首相はマイクのスイッチが入った状態に気づかず、うっかり、このような対話を交わした。

全世界のマスコミに筒抜けになった首脳らの言葉は、10代の少年がガムを噛みながら交わす駄弁そのものだった。しかし、欧米社会で指導者たちが、このように自分の「地金」をあらわにするのは非常に珍しいことだ。

大衆の前に立つ際、彼らは徹底的に準備した言葉と表情で自分を演出する。イラク政策のため、最近ほぼ毎日のようにテレビに登場しているブッシュ大統領も、簡潔で整然とした言葉だけを慎重に使う。考え方によっては、真の姿とは程遠いとも言えるだろう。

先週、大統領学の権威である米ジョージタウン大学のスティーヴン・ウェイン教授に会い、指導者の言動、すなわち「大統領の口と身振り」というテーマで話を聞いた。同氏は「指導者が大声を出すと、関心を引くことはできるが、そんなことは国にとって何のプラスにもならない」と指摘した。

——ブッシュ大統領の演説を聴いていると、米ホワイトハウスの裏話をつづった本に登場する「ばか者」といった卑語を口にする「ミスター・ブッシュ」と同一人物とは、とうてい考えられない。そのようにあらかじめ準備して話すよりは、飾りなく本当の自分を表すのが正直ではないのか。

「歯に衣着せぬ物言いができるのは、大きな美徳ではある。しかし、大統領の場合は、それだけでは済まされない。大統領自身が真実で、正直だと思う話が個人的には大丈夫でも国としては問題になる場合があるためだ。公式の席上での発言は、政府と国の代表者としての発言であって、個人の意見を言うのではない。候補者時代には率直な話し方をするのが望ましいが、いったん大統領に就任すれば、大統領は個人ではなく国の象徴である。大統領の発言は、必ず複数の人の手を経て整然としたものになっていなければならない」

——米大統領たちの演説は、どのような過程を経てまとめられるか。

「即興的な発言はほとんどない。例えば、北朝鮮の核問題だと、国務省内のホワイトハウス国家安保会議(NSC)担当者がまずたたき台を作成し、そのコピーを国防総省、情報局などの関連省庁に回して検討してもらう。協議する中で表現に対する異見があれば調整する。調整に失敗した場合には、大統領が最終決定を下す。演説文の作成担当者が最終案をまとめて関係省庁に再び渡して検討する。補佐官はもちろん、一部議員にも見せて反応を聞く。記者たちとカメラの前で自分の信念を発する前に、あらかじめ不適切な言葉を取り除こうとするものだ。

個人の真実に価値はあるが、公式の場で発せられる言葉は、国益の観点に立って慎重に考慮してから口に出す必要がある」

ウェイン教授は「特に外交的、軍事的問題に関する発言の場合は、意図的にピンボケをしたり、逆情報を盛り込んだりする。これは相手がこちらの胸の内を読みにくくするための手段だ」と説明する。

教授は「ブッシュ大統領がいろんな意見をくみ上げ、予想されるさまざまな反応について熟慮するプロセスをおろそかにした結果、感情任せでストレートな決定を下したことがある。代表的な例がイラク戦争だ」と指摘した。

「公式の席上で話をする時、大統領は二つのことを考えなければならない。大統領は『国民の大統領』である同時に『国民を導く大統領』でなければならない。国民は、大統領が庶民の考えや感情を理解することを望んでいる。政治家たちはそれを知っているから、ストレートな庶民の身近な言葉を使って『自分は理解している』とアピールする。しかし、同時に国民は大統領の言葉がより思慮深く、理路整然で、より核心に迫るものであることを期待する。たとえ、自分が平凡な人でも、大統領になった以上は自分の発言には品位と思慮深さ、そして自分のポストへの尊重を盛り込まなければならない。大統領としての自分と、個人としての自分、そして候補時代の自分、この三つの自分の間には明確な一線を引くが必要だ」

——最近、米国のマスコミは、ブッシュ大統領にかなり批判的という印象を受けているが、ブッシュ大統領はどのような反応しているか。

「民主主義社会でマスコミは政府への監視者として、そして国民に(大統領が説明するのとは)違う角度から観察する視点を提供することでバランスを維持する役割をする。自分の真実だけが唯一の真実と信じ込む指導者たちは、マスコミの批判に耐えられない。もちろん、米国のマスコミにも多くの問題はある」

ウェイン教授は「すべての政治家は、自分は正当な批判より、身に覚えのない批判をより多く受けていると考えるものだ」と強調した。

——論争的な表現を使うのは、国民の関心喚起に役に立つと思うが。

「大衆の関心を必要とする指導者は、いつも大声を出す。そうすれば、戦場の真っ只中にいられるためだ。しかし、国にはプラスにならない。第一に政府と公職への信頼が次第に損なわれる。国民は、指導者がなぜそのような行動をするかについて理解は示すとも(コアな支持者を除けば)尊敬はしないはずだ」

——多弁な指導者とあまりにも寡黙な指導者のうち、どっちがましか。

「寡黙なのはいいことではない。スポークスマンや他の参謀が代わりになって話をするようにさせることもできるだろうが、大統領自らが話さなければならない場合も多い。大統領は教育者だ。国民を教育し、説得させなければならないという公式の役目を負っている。しかし、口数の多いことも明らかな弱点だ。まず、軽薄な印象を与え、自分を苦境に追い込むような不注意な言葉を発することもあるだろう。大統領の演説は、特別なイベントでなければならない。あまりにも頻繁に大衆の前に立つと国民は慣れて鈍感になり、大統領の発言は受けるべき関心と優遇を受けられなくなる」

——51%の支持を受けて大統領に当選したとしよう。51%の国民が望むことを成し遂げるのに総力を傾けることと、残り49%の意思を尊重し、包容することのどちらが重要だと思うか。

「三つの点を考慮しなければならない。まず、強制投票制ではない以上、51%や49%という数字はすべての国民の意ではなく、投票した人の意思でしかない。米国で全有権者の3分の1以上の支持を得て当選した大統領はほとんどいない。第二に、政治システムを考慮する必要がある。与党が政府と議会両方を支配しているときには、より党派的なアプローチをしても無理はない。しかし、現在のように、野党の民主党が議会を支配する状況では、大統領に選択の余地がない。成功したければ超党派的なアプローチをするしかない。第三に、当選当時の状況を考慮しなければならない」

——ブッシュ大統領がレイムダック(政治的な影響力を失った政治家)になりかけているという観測が出ている。レイムダックになってしまった大統領には、どんな姿勢が求められるか。

「ブッシュ大統領は、新イラク政策を強力に押し通そうとしているが、議会やマスコミはこれを支持していない。レイムダックになった大統領が、議会の支持を得ていない案件でイニシアチブを握ろうとするのは決して賢明な姿勢ではない。強行を図れば図るほど、人気はさらに下落し力も失われる。国には早急に動かなければならない時もあるが、休息が必要な時もある。再任期間に強力な力を持った大統領ほど、任期末には新たな巨大政策でイニシアチブを握ろうとするより、国民とともに未解決案件の解決に力を注ぐものだ」



sechepa@donga.com