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[オピニオン]無所有

Posted May. 29, 2008 08:59,   

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哲学者エーリッヒ・フロム(1900〜1980)は、人間を存在志向と所有志向に分けた。存在志向は、花を見るだけでよく、所有しなければならないとは思わない。所有志向は、花が美しいことが重要なのではなく、自分のものであることが重要だ。フロムは、現代人が所有志向に変わってきたと考える。人に対する評価も、「彼が誰か」ではなく、「彼がいくら持っているか」で下されるというのだ。フロムは、「所有と欲望には限界がなく、所有志向的な人生は、幸せになることが難しい」と指摘した。

◆無所有の幸せは、時には持たざる人々に慰めになりもするが、最近は、持つ人が新しく選択するライフスタイルに変わった。17日付のニューヨーク・タイムズは、家、車、家具を売るか他人にやって、昇進と解雇のない自然に戻り、電気もない所で木を焚いて、「自発的な簡素(voluntary simplicity)」を選ぶ米国内の「無所有家庭」が増えていると報じた。

◆19日付のウォール・ストリート・ジャーナルのブログも、約50の投資諮問会社を管理する40代の億万長者が、「裕福になってみると、所有にもはや興味を失った」と言い、高級マンションと車を売って、ホテルで「ホームレス(homeless)」暮しをしていると紹介した。彼は、全財産を社会に寄付する計画だという。フロム式の表現を借りれば、「所有指向から存在指向へ」転換した新人類だ。彼らには、寄付行為においても社会的負債意識がなく、ただクール(cool)に見える。

◆しかしそこまでだ。持たざるゆえに無所有の人生を生きていくほかない普通の人々には、「すべて所有したから、もはや捨てる」という言葉は、なかなか心には響かない。「物欲を抑制せよ」と無所有を勧める宗教家たちの言葉に心が惹かれても、「彼らの背後には、衣食住を解決してくれる教団が控えている」と考え、思わず不条理を感じることと同じだ。にもかかわらず、物欲は人間の自然な本能だ。どんな社会も、捨てる人よりも持つことを欲する人々によって発展してきた。捨てることも自由であり、持つことも自由だ。

許文明(ホ・ムンミョン)論説委員 angelhuh@donga.com