Go to contents

[オピニオン]パニック

Posted October. 11, 2008 06:08,   

한국어

強い不安や恐怖を意味するパニック(panic)の語源はギリシャの神「pan」から由来している。顔は角のついた人間で、体は色好みのヤギと描写されるパンは、極端的な恐怖心をあおる能力があると信じられてきた。古代ギリシャ人は家畜が何かに驚いて走り回れば、パンのいたずらだと思った。恐怖と家畜の群れとをつなげたのはもっともらしい想像力だ。恐怖に強い伝染力あることが、現代科学で明らかになったからだ。

◆パニックは基本的には予測不可能だが、この現象が周期的に起きるところがある。イスラム教徒が一生に一度は行くべきメッカ巡礼のハジ(haji)である。1990年、1400人を皮切りに毎年平均250人が踏み倒されて死亡する。特に、悪魔をかたどった3つの「悪魔の柱」に石を投げる儀式の途中の事故の発生率が最も高い。一番前列の巡礼者が石を投げ始めた後、全ての巡礼者が石を投げる過程で、瞬く間にパニック状態が起きる。毎年繰り返される事故の防止のため、サウジアラビア政府がドイツからパニックの専門家を招いたほどだ。

◆株価が下がり続ければ投売りのようなパニックが起きるのは、人たちは利益よりは損失に敏感であるためだ。心理学者出身でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カナマンは、プロスペクト理論でこれを立証した。例えば、1000ウォンをかけて1000ウォンを儲けるゲームの場合、人々は金をかけない。両方の金額が同様でも、損失の絶対値を利益より2˜2.5倍大きいと感じるからだ。これを「損失回避性」という。磁気共鳴画像撮影(MRI)での脳の分析でも、利益よりは損をする際、脳が活性化されることが分かった。

◆米国に端を発した金融危機で世界がパニックに差し掛かっているが、韓国はその度合いが激しい。為替相場や株価の変動傾向を見れば、隣国はもとより、我々より経済規模の小さい国よりも、振幅がさらに大きいことが分かる。当局の間違った対応も問題だが、市場参加者らの心理的に要因も無視できない。実体すらない狂牛病(BSE)に全国民がパニックに陥った前例もあるではないか。金融市場の混乱に心理的な要因が大きければ、解決策はその不安心理をなだめ、政府が信頼を取り戻すことにかかっている。

鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com