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プラス経済指標だが「マイナスの暮らし」…なぜ?

プラス経済指標だが「マイナスの暮らし」…なぜ?

Posted July. 08, 2010 08:11,   

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首都圏電鉄の1号線、富川(ブチョン)駅周辺で婦人服売り場を経営している金ソンヨン氏(仮名=54、女)は最近、業種を変更することを決めた。商売が振るわず、チキンやピザの販売飲食店に変更する考えだ。

金氏は2年前、事業資金として3000万ウォンを知人から借り、昨年から毎月、少しずつ元利金を返済しているが、今年に入ってから6ヵ月間、一銭も返済できずにいる。金氏は、「ニュースを見ると、景気が回復していると言っているが、実生活では全く感じることができない」とし、「昨年からは、『辛い』という言葉が口癖のようになり、今では『到底やっていけない』という言葉がおのずと口から出る」と話した。

今年第1四半期の経済成長率は8.1%に高騰し、5月の就業者数の増加は8年ぶりの最高を記録するほど、経済指標が好転しているが、庶民はなかなか体感できない。自営業者や中小企業の社長らも、「銀行の利息すら、返済がきつい」と連日、ため息をつくほど、経済の上座と下座の温度差は次第に開きつつある。

●統計に隠れているバブル

庶民が景気回復を体感できる最大の物差しは、「雇用」だ。就職し、金を稼ぎ、消費をし、景気のぬくもりを感じ、余裕も生じる。今年に入り、就業者数は大幅に増加したものの、これは昨年、雇用事情が過度に悪化したことによる基底効果の影響が大きい。

5月の就業者数は2430万6000人と、昨年5月に比べれば、58万6000人増えた。しかし、グローバル金融危機前の08年5月と比べると、36万7000人増となり、伸び幅は減っている。

さらに、政府が国の資金を投入し、創出した希望労働就業者(臨時職)の約10万人を差し引けば、就業者数の伸び幅はさらに減る。実際の景気は依然、金融危機前の水準に及ばない部門が多いが、過度に悪化した1年前に比べれば、好転したように見受けられる統計の錯視現象が起きている。

LG経済研究院のシン・ミンヨン経済研究室長は、「雇用情勢が危機前と比べ、目立って回復しているとは言いがたい」とし、「現在の経済指標が、さらに続いてこそ、一般人らは景気回復を体感できるだろう」と話した。

産業生産や設備投資の統計も、危機前と比べると、バブルが相当弾けたことになる。5月の設備投資指数は126.2と、昨年5月(103.2)より23%上昇したが、08年5月(123.1)と比べれば、3.1%増に止まっている。企業各社が投資を増やしてこそ、追加雇用が創出されるが、現在は危機前の水準を小幅に上回る程度に過ぎず、「雇用エンジン」の役割を果たしていない。

●危機後、さらに深刻化した二極化

経済危機を経て、大手企業と中小企業、高所得層と低所得層、正社員と非正規職の二極化がさらに拡大したことも、庶民の体感景気を下げている。上座のぬくもりが下座まで伝わっていないのが現状だ。

ソウル江西区禾谷洞(カンソグ・ファゴクドン)で、携帯電話の部品製造を営んでいる中小企業のA社長は、「ウォン安が進んでも、中小企業には大して役に立たない」と主張し、「米国や欧州の景気が悪化し、輸出がなかなかできない上、輸入原材料価格の負担は、さらに増大しているためだ」と話した。同氏は、「最近は、売買契約書を持って銀行を訪れても、貸し出し延長をなかなかしてもらえず、中小企業各社は相当緊張している」と伝えた。出口戦略の一つとして、中小企業への保証拡大などの支援措置が7月から中止となり、融資金の回収が相次ぐものとみられ、中小企業業界では、下半期はさらに厳しくなる見込みだ。

大手企業と中小企業との格差は、さらに広がっている。企業の利益を意味する売上高税引き前純利益率は、大手企業の場合、08年の3.3%から昨年は5.9%へと増えた。一方、中小企業は同期間、マイナス2.7%から2.0%への増加に止まった。

非正規職と低所得階層の暮らしは、さらに厳しくなっている。昨年、所得区間別の所得増加率をみると、2〜5区間は全て増えたものの、所得が最も低い区間の20%(1区間)は、0.9%減少した。正規職比非正規職の賃金水準は、08年3月の60.5%から、今年3月は54.7%へと下がった。

現代(ヒョンデ)経済研究院のチョン・ユフン先任研究員は、「経済危機を経ながら、企業各社は正規職の採用を嫌っており、低所得層や非正規職の暮らしは改善されず、これにより、庶民の体感景気は依然、厳しいと感じている」と話した。

李明博(イ・ミョンバク)大統領は6日の閣議で、「景気は確かに回復しているが、小商工人や零細自営業者、一般庶民の生活は依然好転していない」と述べ、体感景気を高める対策作りを指示した。政府も問題の深刻さに気付き、「景気回復の効果を、庶民の生活全般に拡大させる」という目標を、10年下半期の経済政策方向に盛り込み、庶民の体感景気を高める政策を積極的に推進することを決めた。

政府はまず、仕事と教育を通じ、貧困から脱すことができるように支援し、大手企業や輸出企業の業績好転が下請け中小企業へと広がるよう、取引慣行を改善する対策を積極的に推進する方針だ。



lovesong@donga.com turtle@donga.com